日曜市でにぎわう、高知市大手筋に座り込んで絵を描いているおじさんがいた。

お遍路さんだ。

写真を撮っていいですか?と訪ねると「無料じゃいやだ」と言う。

1000円支払って、撮影させて頂いた。

撮影しながら、話をした。

長野県出身、3年8ヶ月、ずっと遍路をしている。

人生が変わったんだと言う。

交通事故だった。一度心臓が止まった。

今まで見たこともないような、それはそれは素晴らしく美しい牛車が迎えに来た。

しかし向こうに見える寺の門前に弘法大師がいて、乗ってはいけないと諭され、

乗らなかった。そして意識が回復した。

仏の道を極めたいと、妻子と別れて旅に出た。

子供は、大学を出たばかりだった。

長い間遍路をしていると、何度も弘法大師に会うという。

人間のごうまんさやみにくさを見抜けるようになると言う。

スタッフが待っているのでと、その場を辞そうとしたら、

「会社をやっていく時には、傲慢にならず、人を信じて頑張れば必ずうまくいく。

自然界、肉食獣の世界でも年よりや子供は円の中に入れ、強い者が表に立って

仕事をしているのと同じだ。働けるものが、表に出てどんどん仕事をしなければ」と。

人間死んだと思えば、何でも出来るとも言った。

それから、おじさんはおもむろに立ち上がり、

左右の足の長さが5センチくらい違う姿を見せた。

立てるようになったことすら医者が驚くほどなのだと言う。

別れ際に、さらさらと絵を描いてくれた。

「弘法大師が導いてくれる、また会おう、元気でがんばりなさい。」とも言った。

生涯わすれられないくらいに、高知の空は澄み、青く晴れていた。

3月3日、家族連れでにぎわう日曜市の路上にて、山と弘法大師の絵を描き続けるおじさん。

それにしても綺麗な顔の弘法大師だ。

 

2002年3月3日 文責 山崎あつこ